2ストロークエンジンを搭載したバイクに取り付けられる排気機構、チャンバー。
今では2ストロークバイクが排ガス規制などによって、ほとんど販売されることがなくなり、排気機構としてはチャンバーよりもマフラーのほうが馴染み深くなってきました。
2ストロークバイクに付けるマフラーのことをチャンバーと呼んでいるだけだと思っている人も多いようです。
間違いではないのですが、チャンバーはマフラーとは構造や役割が異なっています。
今回はそんなチャンバーの役割と仕組み、マフラーとの違いなどについて解説します。
チャンバーとは
上で述べたように2ストロークエンジンを搭載したバイクについているマフラーを「エキスパンションチャンバー」といい、通称チャンバーと呼ばれています。
エキスパンションチャンバー(Expansion Chamber)は膨張室という意味で、チャンバーには下画像の赤丸部分のように膨らんでいる膨張室があることから、チャンバーと呼ばれるようになりました。
チャンバーを理解するためにはまず、2ストロークエンジンと4ストロークエンジンの違いを理解する必要があります。
4ストロークエンジンは吸気バルブと排気バルブが備えられており、吸気と排気がそれぞれの工程できっちり分けられて効率的に行われます。
対して、2ストロークエンジンは吸気と排気を制御するバルブ機構を持ち合わせていません。
エンジンのシリンダー内に吸い込まれた混合気が燃焼済みのガスを押し出す形で排気が行われますが、この時排気されるガスの中にはまだ燃焼していない混合気も混ざってしまうことになります。
チャンバーはこういった排気ガスを排出しながらも、そこに混ざった未燃焼のガスをチャンバーの膨張室から再び燃焼室へ送り返し、圧縮や爆発のパワーを強める仕組みになっています。
エンジンでの爆発燃焼が行われる度に、チャンバー内を燃焼ガスの圧力派が通ります。チャンバー内の衝撃は「+」の正圧派と「-」の負圧派になり、このことをカデナシー効果(脈動効果)と言います。
エンジン内の燃焼し終わったガスがチャンバー内に排出されると音速の正圧派となり、膨張室に進みます。膨張室で広がった空間に出ると負圧が生じるため、エンジン内の排気ガスをさらに吸い込むため、燃焼室に混合気を呼び込みます。
この混合気は勢いよく呼び込まれるため、排気側に一部が溢れてでてしまうのですが、膨張室での反転派がこの混合気をエンジン燃焼室に押し戻し、充填効率が高められることになります。
このタイミングをチャンバーの形状で調整し、タイミングを合わせることによってトルクやパワーアップにつなげることが可能になっています。
出展:Wikipedia
チャンバーとマフラーの違い
前記でチャンバーの仕組みを説明しましたが、マフラーにはチャンバーのような膨張室は設けられていません。
4ストロークエンジンは吸気バルブと排気バルブによって、吸気と排気が完全に分けて行われるため、未燃焼ガスが排気されることがないからです。
マフラーは騒音を低減させると同時に排気ガスの温度や濃度を下げたりすることが主な役割です。
エンジンから出ている下画像青枠部分のパイプを「エキゾーストパイプ(エキパイ)」といい、赤丸部分を「サイレンサー」と呼びます。
サイレンサーの中にはグラスウールなどの素材が詰められ吸音効果を発揮したり、いくつかの部屋に区切って音のエネルギー奪い取ったりしています。
エキパイの長さや太さ、曲がり具合、集合方式(4気筒であれば4つから2つ→1つにまとめる4-2-1方式など)などによって、エンジンの出力特性にも大きな影響を与えることができます。
まとめ
・チャンバーは2ストロークエンジンに特化したもので膨張室が設けられている排気機構。
・4ストロークエンジンには膨張室による送り返しが必要ないため、膨張室の無いマフラーが使用される。
・チャンバーもマフラーも形状やレイアウトでエンジン出力特性に多大な影響を与えることができる。